座・高円寺 年間プロジェクト発表会 金滿里挨拶要旨

2018年4月2日 座・高円寺 阿波踊りホールにて

座・高円寺で行われた、2018年度のプログラム説明会に出席。
座・高円寺の芸術監督・佐藤信さんはじめ、劇場の主催事業あるいは提携公演の劇作家、演出家20人ほどが2018年度の企画のアピールを行ないました。
以下、『ニライカナイ』の劇作家であり演出家・演者として登壇した金滿里の発言内容要旨です。


 劇団態変は旗揚げから35年、障碍者自身が創り、障碍者自身が演じる劇団。 世界中でみてもこれだけの活動歴をもつカンパニーは珍しく、態変が日本に存在するというのは凄く大事なことだと思う。
 この場もそうだが、世間での一般的な価値観は健常者が中心となっていて、どこにも障碍者がいない。健常者だけで、速いこと、効率的なことがよいとされ、立ってすらっとしていることが美しいという価値観に溢れている。
 この価値観を覆さないと、芸術に挑むことはできないと考えている。 ロスだといわれる障碍の身体。ロスな在り方。この在り方をもつ障碍者自身から、ロスでいいじゃないか、ということを突きつけることをやらないといけない。我々が公演を行うこと自体が、健常者文明、優生思想への、芸術による挑戦状なのだ。

 『ニライカナイ-命の分水嶺』は、2016年7月26日に相模原の障碍者収容施設で19人が殺される大虐殺事件が起こってしまった、この事件を契機として創った作品だ。
 私は自分自身、幼少期に障碍児収容施設で育ったので、殺された19人の中に私がいたと思っている。劇団態変は2016年の3月に、座・高円寺で『ルンタ』を上演した。その4ヶ月後にこの残虐な事件が起こってしまった。悔しさと激しい怒りを覚える。この、相模原のある、関東の地域でもっと東日本も含んでこの作品を観てもらいたい。

 作品は、障碍者が施設から脱走して、ひとつの自由を求める冒険。
 それを実際に私はやって、今ここにいる。私の脱走の先に、舞台で演じる転がりがある。
パラリンピック、オリンピックとは相容れない、優生思想とは真っ向から違う芸術表現として、やっていきたい。


金滿里の言葉には、今伝えなければならないという熱い思いと、決意がにじみ出ていた。 残念ながら途中で退席する必要があり、他の聞き手からの反応は得られなかったけれど、態変が今東京にやってくる、ということの意味は、衝撃をもって伝わったのではないかと思う。(文責:制作部)



閉じる