本誌は1994年8月の創刊。当時身障者の自立支援ということで大阪市の支援を受けていた小規模作業所・イマージュの「作業」の一つとして始まりました。雑誌の版下作成や印刷であれば「作業」としての通りも良いのですが、内容を編集する、また様々なイベントを企画し運営する、等々の活動に関しても「それこそ次の時代へ向けた障害者の作業訓練として面白い芽だ」として後押ししてくれる柔軟さが、その時代の行政にはありました。そういうわけで、劇団態変の制作部が作業所・イマージュに間借りしている状況にも誰も異を唱えることはありませんでした。
劇団態変の身体表現の追究だけでなく、幅広く文化全般にまつわる発信を試みていこうという方向性を持つに至ったのは、態変の表現が「障害者による一風変わった表現」というにとどまらず、人類の美意識、ひいては世界観・人間観を根底からひっくり返すものとして展開されるべきだと、そのためには表現を提示し続けるだけでなく謂わばその「外堀」へのアプローチも必要なのだと、そのような大それた発想に基づきます。かかる先鋭的な考えに至ったのは、1992年態変ケニア公演後に態変が陥った存続の危機を乗り越える格闘を通じてでありました。(その詳細は、本誌60号所収の清真人さんの論考をご参照ください。)
上述のような勇壮な心意気に見合うだけの発信を実際にやってきたかといえば甚だ心もとないものがありますが、この回顧特集にあたりこの20年を振り返る年表などを作ってみて感じることは、これから一段と困難な波が押し寄せてくるだろう、と。そして、地を這う歩みではあってもそれを止めるわけにはいかないのだと。今後とも、本誌のお引き立てを何卒よろしくおねがいいたします。