情報誌IMAJU vol.27

身体障害者の介護をめぐる2003年問題(2)
〜文化としての障害者自立が危機に瀕している!〜

仙城真(劇団態変スタッフ)

 20年ばかり前にA氏が地域にアパートを借りた時点から付き合いが始まり、A氏の生活と身体状況の変遷にずっと付き添って来ているので、ことA氏の介護に関しては最上級の資格を有する介護のプロよりも筆者の方がたぶん上だろうと思います。ちなみに筆者はなんら資格は持っていません。

 こういった感じの関係性の中で成立している障害者の自立生活が多いので、制度が変わるからと云ってこれまで入り続けてきた介護者を引き剥がすようなことができるわけがありません。そこで上記のような移行措置(註:大阪市健康福祉局障害者施策部障害福祉課からの文章中「経過措置として一定の基準を満たしておられる方につきましてへルパーとしての必要な知識と技術を有していると認め、申請に基づき証明書の交付を行います。」)が取られることは当然であります。しかし、今後のことを考えると、問題が多々あると思います。  筆者自身、まぁ取りあえず「資格」はもらっておいて悪くないと思いますが、4月以降に介護を続けようと思うなら、A氏が契約を結ぶことのできる特定の「サービス事業者」の所に行って雇用してもらわねばならないわけです。真摯に運営されているNPO系の事業所もあれば、営利に走ったり障害者を尊厳ある個人と見なす感覚を欠如したような気色悪い所もあります。また、組織に所属しそこから介護者として派遣されるからには、様々の規制が入ります。極端を云えば、上記のような5時間だけ有償で残り10時間はなぁなぁで怪しい中年男二人組で過ごす、というような弾力的関わりが許容されるのか?

 組織としては、万が一の事故の責任の所在が問題となり、介護者がやって良いこと、やるべきでないこと、という線引きも生じてくるでしょう。例えば、A氏との間でアメリカのイラク攻撃はけしからんという話が盛り上がり反戦デモに参加したいなということになったとして、ある組織に所属する介護者がA氏の車イスを押してデモに参加することは許容されるのでしょうか?
 筆者は、4月以降どうしようか、大いに迷っております。

 もう一点が、今後新たに介護を始める人に関することです。これまで介護をしてきた人にはとりあえず資格が与えられるが、今後は、まず資格を取ってからでないと介護(有償介護)には入れません。障害者が街頭で仲良くなった人に、介護にも入ってくれよ、あぁ良いよ、というような関係が、これからは窮屈になっていきます。それから、高校生で我々も感嘆するような見事な介護をやる子もいます。そういう子には、コンビニでバイトするより是非とも介護に入って欲しいのに、そういう門戸が閉ざされてしまいます。
 願わくば、制度ができるだけ柔軟になっていきますように…(つづく)

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