いろんなものが絡まって先に進めない、という時期は、誰にでもある。
そんな時、枝がはりめぐらされた暗夜の森に迷い込んだような気がする。方向もわからず手足をばたつかせるだけで、網のような枝に手足をとられ引っ掛かり、身動きすらできないような、そんな森にたたずむ時がある。
私は24歳から29歳ぐらいまでを、そんな気分で過ごした。その時に作ったのが、このバックとして使っているレザークラフトの作品である。
枝が迷路のように、あるいはネットワークのように繋がって、あたかも神経系がゆく先を求めて、縦横無尽に節々を作りながら伸びていくような、そんな自分のはりめぐらした神経に実はとらわれ引っ掛かりどうしても身動き出来ない状態、なんだというのがわかりだした、暗夜の迷える森。
始めは恐くて、ただただ暗夜と思っているのだが、恐怖や脅えの中からも周りを凝視することを覚え、ようやくそこはただの暗夜ではないことがわかりだす。
暗夜の中からも、その中に息づくものたちがボーッと浮かび上がり鳥が見えだす。枝に止まって眠っている鳥や、飛び立つ鳥、うまく飛び立つ鳥もいるし、枝に引っ掛かる鳥もいる。
昼以上に騒がしい森の風景である。そして自分の姿が鳥であることに気付き、しかしその中をかき分け鳥達を騒がしくしているのは、他でもない私自身。一番見えない自分自身は、闇にまぎれて闇自身であることに気付く。
この「金満里の庭」は、一応「社会の庭」「芸術の庭」「生活の庭」の三種類に分けた。それらは私の重要な枝である。この枝はそれぞれに養分を分け合い、養分を受け取る大切なつながりである。そしてそれぞれが一つの世界観である。この枝が縦横無尽に伸び、センサーとして何をキャッチしてくるか。そして小さな「金満里の庭」が、覗いた人が人間の木となり、滅びも含め絶妙に補い合ってていく<大きなジャングルの生態系>に育っていく、そんな楽しい夢も持ちながら作ろうと思う。