『すがた現す者』(2008年)『ファン・ウンド潜伏記』(2009年)と続けてきた「男は旅に出た」シリーズの前2作では、「自由への闘争」を描いてきました。
しかし今回は「自由からの逃走」・・・変換ミスではありません。
人間の歴史は、自由を求めての闘いの歴史だったと云えます。それは時として自らの命をかけた闘いでした。長い闘いの果てに、自由は勝利し、人民は枷から解放された、 ・・・ かに思われました。
だが、その自由を、あるとき人々は、いとも簡単に投げ捨ててしまった、 ・・・ というより、彼らは一目散に自由から逃げ出した。まるで恐怖に駆られたように。
「男は旅に出た」シリーズ完結編は、E・フロム著『自由からの逃走』(1941年初版)を下敷きに、人間の本質をえぐる問題作。
社会心理学の学術的探求と、劇団態変の抽象的身体表現とが、いかなるクロスオーバーを成し遂げるのか。創造と破壊をテーマに据えてきた金満里の新たな挑戦。また、野外テント公演にて、自然と人為の狭間の特殊空間で、強さと脆さを同時に抱える人間の原点をダイナミックに描き出します。
「われわれはドイツにおける数百万のひとびとが、彼らの父祖たちが自由のために戦ったのと同じような熱心さで、自由を捨ててしまったこと、自由を求めるかわりに、自由から逃れる道をさがしたこと、他の数百万は無関心な人々であり、自由を、そのために戦い、そのために死ぬほど価値あるものとは信じていなかったこと、などを認めざるを得ないようになった」
『自由からの逃走』エーリッヒ・フロム
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