俗なるものを心の奥底へ秘め、狂おしく生を突き進む。そんな人間を描きたい。それにはやはりおんなが合う。誰にも触れられない心の聖域を確かめる旅を、存在として常に揺るぎなくここに有るんだよ、と教わった我が師大野一雄のように。女を題材にし、片方の性がもう片方の性を凌駕する、ほどの両性具有性を持ち合わせることができたとき、人間普遍のエロスが立ち上がる。
生きるとは、生き残る本質とは。思いだけで成就させてしまう、動物的な魔物性とでもいえる、生命本能があるのではないだろうか。
86歳で他界した母、金紅珠。そして我が師と呼ぶ、今年101歳の大野一雄氏。それぞれがいて、『ウリ・オモニ』・『月下咆哮』の二つのソロ作品を私は持つことが出来た。
この幸運に巡り合えたことに感謝し、両作品を二人に捧げる。そして、煌めく姿へと思いを馳せ、精一杯演じたいと思う。