記憶の森

 ー塵魔王 と 精霊達ー

2005年大阪公演 公演企画書より

『記憶の森』に寄せて

態変のおとぎ話をやりたいと思った。

 真剣に思い詰めた後に、虚と実の錯綜が急に襲う。そんなとき、誰も理解が出来ない笑いが、突然吹き出す経験をしたことはないだろうか。それは所かまわず、不躾に急にやってくる、困りもの。そんなとき私は、自分の中に気付かず飼っていた虫のようなものが、抑え難く起き上がるのを感じる。自分の知らないものがいつの間にか、自分の中に住み着いていて、その住み着いたやつに触れたときだ。自己ではないと思いたいのだが、しかしもう一人の自己の存在をそういうときには知らされ、実はそいつの方が全うな反応をすることに呆れる。

余りの不条理さのまっただ中で、全うなそいつは不条理を越え、生きのびようとするのか。それが本来の平常心と言うものだったのかも。そんな無意味な、誰もが争い鼓舞する、大人の平常心というものを、私は態変のおとぎ話としていつかは作りたいと思っていた。それがようやく機が熟した。それっ、行け。今だ!

 悪の小心者塵魔王魔法使いが、ひ弱で善良な心優しい精霊達と住み家の森を、破滅せしめようとする。心の奥底まで見透かしたような、薄笑いの小心者塵魔王魔法使いの悪と、馬鹿にされながらも手を打ちはしゃぎ前向きにぶち当たる事しか能のない、精霊達の善と、善と悪の闘いの物語として。

 何より、大口空け呆れ果て、楽しんで頂ければ幸いである。

金満里 


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