BLOOM

劇評

 

Brian G. Cooper

 態変という注目すべき障害者の劇団が日本からやってきて、観客を挑発し、混乱におとしいれている。我々のステレオタイプ的な 障害観ならびに身体芸術の定義に疑問を投げかけるというかたちで。

 大阪をベースに活動するこの13人の強力なグループには、CP、ポリオその他の障害を持つ、9人の重度障害者が含まれる。 彼らは黒子によって車椅子からステージに上げられるや、よじれながら這い進み、うごめき、転げまわる。 その周りを別種の障害を持つ共演者たちが跳ね、走り回る。
 彼らが力強く表現していくものは、人生を充実させようとする人の闘いと、 泥と雨の中からの美しい花の開花との共通性とでもいうもので、 最後まで観終わった時には全くビリビリとしびれるような感動にみまわれる。

 「普通」の感覚ではぶざまで見苦しいと見なされるはずの彼らの動きが、鋭い感性によって、 心を撃つ美へと変容されている。そのような動きと融合する、 日本の伝統的な打楽器と鐘と、あたかもギリシャのコロスを彷彿とさせる歌とが、 また格別に心を揺さぶる。

 イマージュの制作によるこの極めて忘れ難いパフォーマンスは金満里(態変の創立者で役者) の演出によるもので、「障害を持つ身体は特異な表現力を持つ」という彼女の哲学をはっきりと表すものだ。 この特異で型破りな作品は、実は、強力な振り付けの鍛練のたまものなのである。                       

1996年8月15日 THE STAGE (Scotland) p.21 

 

Ewan McVicar

 8人の役者がゆったりと静かに演じるのは、 一握りの土地の地下と地表で植物どうしが繰り広げる 巨人のごとき争いと暴力の物語であり、私たちの眼をステージに釘付けにする。

 ユーモアも忘れられてはいない。例えば、生まれたての鬼百合が よろよろとよろめいたり、おっかない鋏を振り回す悪魔の庭師が出てきたりといった具合に。 役者のうち5人は非常に重い運動障害のため、ステージへの出入りを抱えられて行なう。 全員がぴったりとした衣裳を着けて、歪んだ身体の形、不自由な手足、 を細部にわたって見せるようにしている。正確な頃合いをみて時折響くパーカッションが、 歌手・天鼓による熟達した豊潤な即興のヴォイスを盛りたてている。

 通常、私たちはずっと「正常」な身体の動きばかりを見てきて、普通でないものから 眼をそらしがちだ。この公演では、ねじれた身体、表情豊かな顔、から、身体の動 きというものの美しさ意味深長さを教えられる。あの役者はちゃんと舞台の向こう端 にたどりつけるのだろうかとはらはらどきどきさせられつつ、転がるという動作がど うやって一まとまりのダンスステップに匹敵し得るようになるのかを教えられるので ある。
 ラスト、役者が去った空っぽのステージに向かって拍手がなりやまなかった。

1996年8月16日 Festival Friday 7 (THE SCOTSMAN)

 

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