ラ・パルティーダ 〜出発'06 回顧



(クリックで拡大、裏面も見れます)
 態変は抽象的身体表現を追究する芸術集団として、基本的には観客の自由なイマジネーションにまかせる作風で作品を創ってきましたが、表現の幅を拡げる意図でストーリー性を持つ作品にも取り組んでいます。
 その最初は1999年の『ラ・パルティーダ 〜出発』。1973年のチリのクーデターで虐殺されたビクトル・ハラを取り上げた作品でした。
 続いて2001年には、実在した脳性麻痺者のコンミューン「マハラバ村」をモデルに自由に物語を紡いだ『マハラバ伝説』、2008年にチェ・ゲバラの生涯を描いた『すがた現すもの』、2009年に韓国独立運動の闘士を主人公にした『ファン・ウンド潜伏記』と、ストーリー性から一挙に歴史的事実を扱った作品に、身障者の抽象的身体表現にて、取り組んできました。
 その中でも2006年に大改作にて再演した『ラ・パルティーダ 〜出発 '06』は歴史性の掘り下げとして特記すべき作品でした。

その上演意図を伝えるダイレクトメールをここに再掲します。(画像をクリックで pdf が開きます)
DM画像


以下にテキストを再掲します

「母を食う歌」

7 年前、荒野をめざし、歩いてきた。
当てどもない、前人未到の荒れ地を、己の屍を拾い・引きずり、ある時はむさぼり食うようにして。
一つずつの塚をふり返れば、見えるようで見えないようで。
しかしそんなことはどうでもよい。

風すさむ荒野が心地よい。
人か己か、もう記憶もない程に、風に舞う砂塵に食った屍に、伝えた人影を垣間見る。

生きている。
確かなものに息づく、今は亡き人々の魂が、穏やかに無言に伴走するが、すさむ風。

人は一人では生きては行けず、しかし荒野に一人のように、誰も見えず
目の前を塞がれているようなもの。
本当のものは近くて遠いようなもの。

砂粒のような人々の声と心を大切に、遠く近くに伴走者と共に、
ビクトルの心に今行き着くところに。
悲観など無縁な、希望、が、見えてくる。

(2度繰り返された9・11に思いを寄せて)2006年8月25日 金滿里



作品紹介

物語の舞台は、最果ての荒野。
豊かな鉱物資源は他国の手に渡り、
人びとは貧しい暮らしを強いられている。
しかし、砂塵と絶望にまみれた灰色の世界にいながらも、
人びとは大地に根ざし、自分自身として生きることを諦めない。
主張し、闘い、共に喜び、たくましく己の命を謳歌する
名も無き人びとの生きる姿、そして不屈の魂を
描きます。


年表

1970 年

米ソ冷戦只中、世界で初めて自由選挙による社会主義政権がチリで誕生。
アジェンデ大統領はこれまで外国企業の下にあった銅山などの天然資源を固有化し、
また社会保障の拡大を進め、民衆の支持を得た。

1973 年

9月11日、アメリカ・ニクソン政権の指示と工作により、チリ軍部クーデターが勃発、
アジェンデ政権は崩壊した。
ビクトル・ハラとラ・パルティーダ
クーデターの時、5000人もの市民がスタジアムに逮捕され、拷問を受ける事件が起こった。
その一人であった、アーテイストのビクトル・ハラはギターをとり、歌で仲間を励まそうとした。
軍人にギターを取り上げられると、ピクトルは手拍子で「ベンセレーモス」の合唱へと導いた。
軍人に両腕を折られ、それでも尚、立ち上がって勇気と希望を歌い続けようとしたため、
一人引き離され、虐殺された、という。
今公演の作品タイトル「ラ・パルティーダJ は、ハラの美しい器楽曲 "La Partida" から名付けられた。

1989 年

チリのピノチェト独裁軍事政権が終焉、民政移管された。
9.11のスタジアムは、ピクトル・ハラ・スタジアムと名付けられた。

1999年

「ラ・パルティーダ 〜出発」広島初演
数年前より教育現場での日の丸・君が代の義務付けが社会問題化。
作品台本執筆に着手した日、広島の公立高校校長の自殺事件が起きた。

2001年

9月11日、アメリカ・ニューヨーク同時多発攻撃事件

2003年

自衛隊、イラクへ派兵

2005年

日本国憲法の改定論議が具体化

2006年4月

第6回大阪野外演劇フェスティバルへ劇団態変の参加が決定。
上演作品に「ラ・パルティーダ 〜出発'06」を選ぶ。
同時に大挙して行進するシーンに出演するエキストラの募集活動スタート。
呼びかけ文は、
出発しよう! 役に立つか、立たないか、命そのものを誰かに分類される世の中なんて、
誰一人、幸せに生きられない。だから、そんな分類はバカバカしい、と笑い飛ばして、踊り飛ばしてしまおう。」

2006年6月

初演で共演した広島のミュージシャンの佐伯さん、今公演参加も即快諾。
ほかに、南米でも音楽活動されている八木さん始め、ビクトル・ハラに造詣の深いミュージシャンの参加が決定。

2006年8月

エキストラ出演呼びかけに対し、予想を越えて総勢25名もの人が次々に名乗りを上げた。
さまざまな思いを込めて、自由に力強く身体は踊りだす!

2006年9月21〜23日

扇町公園にて、いよいよ本番の幕が開く!


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