ラ・パルティーダ −出発

作・演出 金満里

photo by Kohji Fukunaga (studio epoque)

荒野へ向かえ

荒涼たる荒れ地を前にたたずむ者一人
そこは 前人の累々たる屍の跡か
風に舞うは 砂時計のように積もり積もった骨粉か

途方もなく 終わりなどありそうにない荒野にたたずみ

誰一人として 伝えたことのない物語を落としに
そして拾ってくれる当てもない
だから荒野に向かおう 自らの屍を食うために

金満里



 人々の喜びや哀しみ、そして生きる権利を歌い、世界から愛されたチリのアーティスト、ビクトル・ハラ。巨大な暴力に抗しない強い意志で、勇気と希望を歌い続けたため、1973年のクーデターにより虐殺されました。芸術家として彼が伝えたものは何だったのか。同じ芸術家として、この問いを探るため、今作『ラ・パルティーダ -出発 』に取り組むことにしました。

 物語の舞台は、最果ての荒野。豊かな鉱物資源は他国の手に渡り、人びとは貧しい暮らしを強いられている。しかし、砂塵と絶望にまみれた灰色の世界にいながらも、人びとは大地に根ざし、自分自身として生きることを諦めない。主張し、闘い、共に喜び、たくましく己の命を謳歌する名も無き人びとの生きる姿を描きます。ビクトル・ハラが当時影響を受け、歌にした荒野の人々と、ビクトル自身が貫いた不屈の魂。いつの時代も、この生きる魂の本質は普遍なのではないか、と思います。

 民衆の生きる力と普遍的な魂。ビクトル・ハラの名曲「La Partida」のライブ演奏を背に、地域から這い出てきた公募障害者エキストラの面々と共に、身体で表現したいと思います。


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