作品紹介
今回劇団態変が挑むのは、人類が滅亡したあとの世界です。
自然を征服し、原子力という禁断の実を食べたおごりへの報いとして人類が滅亡したのち、地球にまた生命が生まれていく原初的で近未来的な旅を、態変の身体を通して表現します。
この舞台空間をともに作り上げて下さるのは、ウォン・ウィンツァン氏の生演奏を含めた音楽、そして榎忠氏の舞台美術です。
ウォン・ウィンツァン氏は、NHK「家族の肖像」のテーマ曲などで知られるピアニストであり、瞑想的なスタイルでの即興演奏家としても活躍されています。榎忠氏は、「ハンガリー国へハンガリ(半刈り)で行く」といったパフォーマンスアートで知られる一方、近年は廃材の金属を加工した大砲や銃などによる造型作品を製作されています。
両者が強いエネルギーを放ちあうその境界を、水中でもなく空中でもない水面をスイスイとわたるミズスマシのような身体が辿る、命の冒険の旅。緊張と弛緩、収縮と拡散、生と死など、いくつもの両面性を内包する態変の身体性をお楽しみいただきながら、新しい出会いのなかで生み出される表現の舞台をぜひご覧いただきたいと思います。
音楽・美術 表現者紹介
音楽:ウォン・ウィンツァン
1949 年神戸で 香港出身の父、日本と中国のハーフの母との間に生まれ、1 歳より東京で育つ。英国籍。19 歳より プロとしてジャズ、前衛音楽、フュージョンなどを演奏。
87 年、瞑想の体験を通して自己の音楽の在り方を確信し、90 年よりピアノソロ活動を開始。
92 年、サトワミュージックを発足、1'st アルバム「フレグランス」がロングセラーになる。現在まで「Doh Yoh」「エ イシアンドール」「たましいのトポス」「光の華」など 23 タイトルの CD をリリース。 NHK「家族の肖像」、BShi「九寨溝」、現在放送中の NHK「にっぽん紀行」や E テレ「こころの時代」のテーマ曲で も知られる。
地雷犠牲者救援 CD「もしも地雷がなかったなら」、ジャズトリオ WIM、クラシックアルバム「ドビュッシー」「エリッ ク・サティ」など活動は多岐に渡る。
超越意識で奏でる透明な音色で「瞑想のピアニスト」と呼ばれている。
美術:榎忠
1944 香川県善通寺市に生まれる。
2006 個展「その男、榎忠」(KPO キリンプラザ、大阪)
2007 二人展「ギュウとチュウ 篠原有司男と榎忠」(豊田市美術館)
2008 個展「この男、危険。榎忠展」(札幌宮の森美術館)
2009 神戸ビエンナーレ 2009(神戸港ドルフィン、兵庫県立美術館ギャラリー棟)
2011 個展「榎忠展 美術館を野性化する」(兵庫県立美術館、神戸)
2012 「第一回 C.A.J アーティスト イン レジデンス 篠原有司男・榎忠展」(埼玉県立近代美術館 地下一階ギャラリー、埼玉)
個展「誰がために大砲は鳴る」(CAPSULE / SUNDAY、東京)
専業美術家ではなく一般の金属加工会社で旋盤工の会社員をしながら週末を利用して制作に集中する生活を過ごし、定年まで勤め上げた。作品のために 「半刈り」だった時期もそのままの状態で勤務していたという。村上隆など多くの現代美術家に強い影響を与えている。2008 年に第 32 回井植文化賞、 2009 年には神戸市文化賞を受賞した。